業種 | 建築業 |
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負債総額 | 9,000万円 |
債権者数 | 57社 |
ポイント | 未回収の売掛金回収、会社資材の売却により破産申立て費用を捻出 |
相談に来た経緯
相談者は、足場工事やリフォームなどを行う建築業の会社の社長でした。
営業当初は売上も順調で、県外に営業所を設立するほどでした。
県外に営業所を設立したことにより、受注も増えていき資材も足りない状況になりました。
そのため、資材購入のため設備投資を行おうと銀行へ融資の申込をしましたが、当初予定をしていた銀行からの融資が受けられなかったことにより、やむを得ず高利貸しからお金を借りることになりました。
また、営業所の従業員が辞職したこともあり経営状況も徐々に悪化し、返済に追われている日々になりました。
代表者と奥様が会社の連帯保証人となっており、生活もできない状況に追い込まれたとのことでご相談にいらっしゃいました。
当事務所の対応
資金は既にショートしており、従業員への給与の支払いもできない状況でした。
そのため、まずは未回収の売掛金債権、仕掛り工事の状況や換価価値のある資材の有無などを早急に調査しました。
その上で、未回収の売掛金債権の回収と仕掛り工事への対応を行いました。
幸いにも、同業種の会社が仕掛り工事の後処理等をサポートしていただけたため、換価価値のある会社の資材なども回収することができました。
また、高利貸しからのしつこい取り立てにも遭っておりましたが、受任通知を送付し、取り立てを止めることもできました。
従業員に対しては、給与の支払いができなかったため、すぐに解雇をしました。
もっとも、未払いの給与については立替払い制度を利用して、最低限の生活の補償をすることはできました。
弁護士費用
破産するに際しても弁護士費用が必要となります。
事業を停止した時点で十分な資金があれば良いのですが、そうでない場合には将来の売掛金を回収し、弁護士費用を準備する必要があります。
本件でも事業停止時点での預金だけでは費用が不足していたので、会社に残された資材の適正価格による売却や債務者と交渉による売掛金を回収等で、なんとか費用を準備することができました。
このように、相談時点で会社に現金がない場合でも回収見込みの高い売掛金が存在する場合などでは、破産ができる場合があります
破産申立
債権調査や資産の調査が終了した段階で、裁判所へ申立を行います。
申立にあたり、代表者及び関係者の協力は必須です。
いかに協力的に資料の作成や準備を行っていただくかによって申立の時期が変わります。
幸いにも、解雇した経理担当の従業員の方の協力が得られたので、必要書類の準備等はスムーズに行うことができました。
本件は、申立て費用の捻出のため売掛金回収や仕掛り工事の処理に時間を要し、受任から約3ヵ月で申立を行いました。
債権者集会・その後
申立から2ヶ月後に債権者集会が開かれました。
債権者集会とは、債権者の意思を手続きの遂行に反映させるために開かれる破産債権者の集会のことです。
具体的には、破産者の財産状況について破産管財人が調査した結果を報告し、破産手続きの進行について債権者の意見を聴取します。
今回の事例では、計5回の集会を経て、申立後約1年で破産手続は終了しました。
最後に
破産申立てをするためには、申立て費用が必要になります。
本件では、相談事時、会社資金は底をついており、申立て費用はありませんでした。
しかし、未回収の売掛金や残された会社資材の売却などにより、申立て費用を捻出することが可能な場合もあります。
また、高利貸しなどの苛烈な取り立てを行う業者からの借入れをしている場合は、その取り立てによって精神的にも追い込まれてしまいます。
しかし、弁護士からの受任通知によって、その取り立てを免れることもできます。
まずは、ご相談ください。