業種 | 建物建築業・不動産業等 |
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負債総額 | 1億7000万円 |
債権者数 | 11社 |
ポイント | 代表者も破産手続きを行った・売掛金を回収し破産申立費用に充填 |
相談に来た経緯
相談者は、建物建築業・不動産業等を行う会社の社長でした。
当初は個人事業として土木・鳶業を主力業務とし、売上は年間2000万円ほどあり、とても順調でした。
その後、仕事の幅を広げようと会社を設立し、複数の従業員を雇用しながら、建物建築業・不動産業等を行うようになりました。
個人のお客様がほとんどで、売上も順調でしたが、ここ数年で業界全体の仕事が激減し相談者の会社の売上げも減少しました。
これに追い打ちをかけるように、主要取引先であった会社が破産し、700万円もの売掛金を回収できず、この年に、創業以来はじめて赤字決算となってしまいました。
経営状況を回復すべく、金融機関から追加融資を受けてなんとか持ちこたえている状況でしたが、毎月の売上が少なく、返済だけで精一杯でした。
追加融資を受けることができた3000万円を原資にフランチャイズに加盟をしましたが、労働状況などの見直し等が必要となり、経費が大幅に増え、かえって返済が滞るようになってしまいました。
再度融資を依頼しましたが、経営状況も悪かったため融資を受けることもできませんでした。
営業を行いなんとか個人のお客様を増やそうとしましたが、営業をかけるのにも費用がかかり、融資を受けられないと営業ができない状況になり、経営状況も回復せず、支払いが困難な状況となたため、相談にいらっしゃいました。
当事務所の対応
法人については売上回復の見込みもなく、資産もなかったことから、破産手続をとることとしました。
法人に現預金がわずかしかありませんでしたので、既に発生している売掛金を確実に回収して破産申立のための費用に充てることにしました。
未払い給与が発生していたこと、破産をすることが取引先に漏れてしまい賃借物件が荒らされ物品持ち出し等のトラブルが発生したこと、申立準備中に代表者が体調を崩し協力を得ることが難しくなってしまったこと等色々な問題がありましたが、従業員の協力のもと手続きを進めることができました。
弁護士費用
破産するに際しても弁護士費用が必要となります。
今回は、現預金がわずかしかありませんでしたので、売掛金を回収することで弁護士費用に充てることにしました。
相談時点で会社に現預金がない場合でも回収見込みの高い売掛金がある場合などでは、ご依頼いただく時点で費用を全額ご準備いただくことが難しくても破産手続を進めることができます。
破産申立
債権調査や資産の調査が終了した段階で、裁判所へ申立を行います。
申立には、代表者及び関係者の協力がとても重要となり、いかに協力的に資料の作成や準備を行っていただくかによって申立の時期が変わります。
今回は、代表者が体調を崩してしまったものの、従業員の方に協力いただけたこともあり、破産申立までに5回ほどの打ち合わせを経て、受任から約2ヶ月で申立を行いました。
債権者集会・その後
申立から約2ヶ月後に債権者集会が開かれました。
債権者集会とは、債権者の意思を手続きの遂行に反映させるために開かれる破産債権者の集会のことです。
具体的には、破産者の財産状況について破産管財人が調査した結果を報告し、破産手続きの進行について債権者の意見を聴取します。
今回の事例では、計6回の集会を経て、申立後約2年で破産手続は終了しました。
通常は申立後1年ほどで終了する場合が多いですが、今回は法人の資産が多数あり換価手続に時間を要したことから約2年間かかりました。
最後に
申立の準備段階で様々なトラブルが発生してしまいましたが、従業員の方に協力していただくことができたことで、無事申立を行うことができました。
スムーズな解決には、代表者をはじめ関係者の協力が必須です。
従業員にとっては会社が破産するとなれば給料が払われない、次の就職先を見つけなければならないことになってしまいますので、破産手続に真摯に協力してくれる従業員は多くありません。
今回は、日頃から信頼関係を構築していたおかげで、代表者に代わって従業員協力のもと無事に手続を進めることができました。
受任後に予定していた売掛金の回収についてはほぼ予定通り進めることができ、費用も準備することができました。
法人の破産手続をご検討されている方は是非一度ご相談ください。