未払賃金立替払制度とは
未払賃金立替払制度とは、「賃金の支払の確保等に関する法律」によって創設された制度で、企業の倒産により賃金や退職金が支払われないまま退職を余儀なくされた労働者に対して国が賃金の一部を立て替える制度です。
会社が倒産状態にあるような場合には、従業員の賃金が未払いとなっているケースが多いため、労働者の生活を守るために創設されたものです。
この制度による受給者は毎年4~7万人にものぼっています。
しかし、この制度はすべての倒産した会社からすべての従業員の未払い賃金全てが立て替えになるわけではありません。
未払賃金立替払制度の適用対象
まず、適用対象となる会社と従業員については、
- 労災保険の適用事業の事業主で、かつ1年以上事業を実施していること
- 倒産したこと
- 破産手続開始等の申立ての6ヶ月前の日から2年間に退職
という要件を満たす必要があります。(※その他、事実上の倒産でも適用が可能であることや、賃金額についての管財人の証明が必要であることなどは省略します。)
また、立替払の対象となる賃金は、退職日の6ヵ月前から立替払請求日の前日までに支払期日が到来している未払賃金で、立替払の額は、未払い賃金総額の8割です(限度額あり)。※対象賃金が総額2万円未満の時は対象外
事業者要件に関しては、1年間事業を実施していることが必要ですので、設立間もない会社が倒産した場合には適用できません。
また、この1年要件は単なる会社設立日ではなく、労働者を使用していた期間が1年以上ないと認められません(金融法務事情1950号92頁)。
また、賃金とは、「労働基準法24条2項本文の賃金及び・・・退職に係る退職手当」(賃確法施行令4条2項)とされており、この中に賞与(ボーナス)、解雇予告手当、臨時に支払われた賃金、出張旅費等は含まれないことは注意が必要です。
未払賃金立替払の請求は破産手続き開始決定後に選任される破産管財人(弁護士)からなされますが、従業員への早期立て替え払いの実現のため、申立の段階でできる限りの準備をしておくことが肝要です。