民事再生の壁について
破産手続きが、全ての財産を換価し配当するといういわゆる清算型倒産手続きであるのに対し、民事再生というのは、その名のとおり民事再生法に基づいて行われる再建型倒産手続きです。
会社の存続を希望する以上は、できる限り民事再生を検討した上で、最終手段として破産手続きを選択すべきです。
しかし、特に中小企業において民事再生を選択するには、非常に厳しいハードルがいくつかあります。
①経営者の再生意欲
民事再生手続きでは破産手続きと異なり、代表者が業務遂行権及び財産管理処分権を失わず、裁判所の監督の下、再生をしていくことになります。
これをDIP(Debtor In Possession(占有を継続する債務者の意))型手続きといいます。
そのため、当然といえば当然ではありますが、経営者の再生意欲がなければ民事再生はできません。
②事業収益
事業再生は基本的に、債務を一定程度カットしたうえで、事業を継続し再生していくことになるので、再生すべき事業について収益が見込めることが必要です。
つまり、損益計算書上の営業利益が出ているか否かが重要な点です。
民事再生を希望される会社で、この点をクリアできない会社が実は多いのが現状です。
もっとも、損益計算書上営業利益が出ていないと直ちに破産かというと当然そうではなく、不採算事業を廃止や経費削減が可能である場合には当然、それをまず検討すべきでしょう。
③資金繰り
民事再生手続きは破産手続とは異なるといえ、取引先に与える影響は甚大です。
今まで掛けでの決済をしていた主要取引先が、現金払いでしか認めないなどの状況の変化により、当初見込んでいた資金繰りが困難になる場合が想定されます。
④予納金の準備
中小企業の民事再生の最も大きな壁は、裁判所に収める予納金の準備ができるかどうかであると思われます。
福岡地方裁判所での民事再生手続きの予納金は、最低でも150万円程度の現金(当初納付額、追加納付額合計)が必要になります。
この他、担保権者との協議が可能であるかどうか、公租公課などの滞納処分による強制執行などを受けていないか、債権者が再生計画に協力してくれるかどうかなど、重要なファクターは多くあります。
このような事情を検討したうえで、民事再生が困難である場合に、破産手続きが選択されるということになります。